システム開発契約を巡る紛争 その3(完)

投稿日:2017年2月21日

カテゴリ:事務所ブログ

最後に、取り上げますのは、検収以降に生じ得るトラブルについてです。

開発者側からすれば、「検収印さえもらってしまえば何とかなる。報酬を請求できる。」と考えがちで、したがって、「とにもかくにも、検収印をもらってしまえ」という発想で、必死に検収を進めようとすることがあります。

しかし当然のことながら、いくら検収印があったとしても、実際に検収が行われていないことが立証されれば、検収が終わったことにはなりません。実際に、検収印が押されていることをもって、開発者側が開発の終了を主張したにもかかわらず、発注者側が、「その日の検収は実は全く行われていなかった。事情を理解しない担当者が、開発者側にいわれるがままに、ハンコを押しただけだ」と主張し、この事実を立証し、開発者側は報酬請求どころか、履行遅滞の責任を厳しく問われる、ということはありうるのです。

せっかく検収をしっかりしたのなら、検収の経緯はしっかり記録に残しましょう。

さらに、システム開発固有の問題として、「バグ」があります。「バグ」があるからと言って、システム開発債務に不履行があったことにはなりません。しかし、あまりにもバグ、不具合が多すぎて、システムの稼働そのものに支障が生じるくらいならば、それは、「債務不履行」となりえます。単なるバグか債務不履行か、その判断はなかなか微妙なところがあります。

システム開発契約に関する裁判例は、また蓄積が始まったばかりです。今後の判例の展開を注意深く見守るとともに、契約書をよくチェックし、また締結後は契約履行状況の記録を残して、紛争を未然に防ぐことが非常に、非常に大切になります。