インハウスロイヤーの増加を巡る雑感

投稿日:2017年6月26日

カテゴリ:事務所ブログ

司法研修所を出てすぐに、つまり実戦経験を積まずに、企業に就職し、インハウスロイヤー(企業内弁護士)になる人がずいぶん増えている、と、業界内では話題になっています。どうやら、弁護士として事件を受けて、事務所を維持し、自分の食い扶持を稼いでいく、という自信のない若い方が、企業に入って安定を求めることが多いようです。

 

考えてみますと、裁判官、検察官、弁護士、という、法曹三者の中で、人から信頼を得ないと、本気でやっていられない、マジで廃業しなくてはならなくなる、というのは、弁護士だけです。裁判官も検察官も、客に逃げられて、おまんまの食い上げになる、という事態には、遭遇しません、どれだけぼーっとしていても。なんといったって、お客が手錠されて目の前に連れてこられるわけですから…。目の前にいるその人、その人の信頼を得ないと仕事がなくなる、という事態には、ならないのです。

でも弁護士は、違います。

目の前にいるそのお客様、その方から信頼され、一大事を任せていただけなければ、価値がない、というのが弁護士です。法律家としてどれだけ賢かろうが、知識があろうが、ご信頼をいただけない、事件を扱わせていただけないなら無用の長物で、何の役にも立ちません。だから弁護士は、裁判官より検察官より強く、厳しく、人格の陶冶に努め、お客様からご信頼を得る、信頼に足る人間になるべく、日夜努力しなくてはならない、そういうものです。

そうやって事件を任せていただける、その有難さ、お客様からご信頼をいただいて事件を処理することこそ、この職業の醍醐味といえます。自分が、お客様から信頼されているか、必要とされているか否かが、日夜、真剣に問われ続ける。

 

私たちはその問いに全力で向き合い、全力で応えていく、そういう弁護士集団であり続けたい。それでこそ弁護士と言えるから。若い人たちが、志をもって企業に入っていくのであればともかくとして、ただ「安定」だけを求めてインハウスになるのであれば、それは、在野で戦う弁護士としては寂しいことです。それに、実戦経験のないインハウスロイヤーに何の意味があるでしょうか。

弁護士は日々の法廷で戦うだけではありません。毎日、お客様から信頼を得ていくための一つ一つの動作が勝負です。これに負けたら廃業です。常在戦場の過酷な状況の中で自分を磨き続ける努力。私たちはこれを怠らない弁護士であり続けます。