父は、私の母と離婚後に渡米し、米国で米国市民の女性と再婚して子をもうけました。その父が、米国市民権を取得する前に米国で亡くなりました。相続人は米国で同居する現在の妻とその子ども、そして日本に住む私です。父は日本と米国に不動産や預金などの資産を持っていました。どのように相続手続きをしたらいいでしょうか。
投稿日:2026年3月2日
カテゴリ:相続Q&A
最初にやるべきなのは、「誰が相続人になるのか」「遺産をどう分けるのか」というルールをはっきりさせることです。ここがいちばん分かりにくくなりがちです。
日本では、相続に関しては原則として「被相続人(亡くなった方)の本国法」が適用されます(法の適用に関する通則法36条)。お父様が日本国籍のままで亡くなられたのであれば、日本側の整理としては、基本的に遺産全体について日本の民法を前提に検討することになります。
アメリカは州によってルールが異なりますが、一般論としては、不動産はその不動産がある場所の法が適用されます。動産(現金・預金など)の場合は、亡くなった時の住所地の法が適用される、という考え方がとられることが多いです。
お父様が遺言書を残していない場合、日本の民法では相続分は次のとおりとなります。
現在の奥様:1/2
お子様(あなたと異母兄弟):残りの1/2を等分(各1/4ずつ)
※お父様の前妻は、離婚している限り相続人にはなりません。
日本での不動産や預貯金は、意外と簡単に進められます。
遺産分割協議:相続人全員(あなた、アメリカ在住の奥様、異母兄弟)で遺産の分け方を話し合い、合意内容を遺産分割協議書として書面にまとめます。
書類準備:アメリカ在住の相続人は、通常,日本の市町村で発行する印鑑証明書を取得できません。代わりに、現地の公証役場や日本領事館で発行してもらう署名証明(サイン証明)などを用意する必要があります。
アメリカ側の相続で特に注意したいのが、プロベート(Probate)と呼ばれる裁判所手続です。
プロベートとは、裁判所の監督のもとで、遺産の内容を整理し、必要な清算(債務の整理)を行ったうえで、相続人へ分配していく手続を指します。
期間と費用の目安:州や遺産の内容によって差はありますが、完了までに1年〜3年程度かかることもあり、手続きが長引くと、弁護士費用などのコスト負担が大きくなりやすい点にも注意が必要です。
不動産の扱い:特に米国の不動産は、このプロベートを経なければ、名義変更や売却を進めることが原則としてできません。
日米二重課税の回避:相続税についても、日本とアメリカの両方を把握しておくと後がスムーズです。
日本の相続税:相続人が日本に居住している場合、原則として全世界の資産(日本+米国を含む)が課税対象です。
アメリカ側の課税(遺産税等):米国籍ではない方であっても、アメリカ国内にある資産が米国の課税対象となる可能性があります。
外国税額控除:同じ資産に対して日米の両方で税負担が生じた場合、日本の相続税申告時にアメリカで支払った税額を差し引くことができます。
まとめとアドバイス
今回のケースでは、「アメリカ側のご家族との連絡・調整」と、「日米それぞれの専門家(弁護士等)に並行して相談すること」が欠かせません。実務上は、次の順で進めるのが現実的です。
1. 戸籍謄本の収集:お父様の出生から死亡までの戸籍を揃え、相続人が誰かを確定・証明します。
2. アメリカの弁護士・会計士の選定:プロベート手続や、アメリカ側で必要となる税務申告・資産手続に対応するためです。
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