弁護士の交渉術

投稿日:2017年5月25日

カテゴリ:事務所ブログ

弁護士は法律家であるだけではありません。裁判実務に精通しており、また交渉のプロでもあります。

よく「弁護士の交渉術」などという本が売られていますね。なかにはよくまとめられているものもあります。ですが、「鉄板の交渉術」というのはないものです。交渉相手は多種多様な利害、個性、経験値と目論見をもって、私たちに対峙してきます。この相手は、何を求めて、何にこだわっているのか。この相手には、どういう方法が有効か。私たちプロは交渉に臨んで、それらを瞬時にその場で判断し、自分たちの経験値に照らして、次に発するべき一言、一言を考えます。

先ほど、鉄板の交渉術はないと申し上げました。しかし、どの交渉にも当てはまるといえる、一般的な注意点というものはいくつかあります。

一つは事前準備です。相手に関する情報を集める。相手は今までどのような活動をしてきたのか。今どのような局面にいるのか。そして一方では、自分に関する情報の整理です。自分はこの交渉に何を求めているのか。絶対に引けない線はどこにあるのか、どこまでなら譲歩可能なのか。自分の望みを実現するために、これ以外の手段はないのか。「敵を知り己を知れば百戦して危うからず」というのはまことにそのとおりで、ともかく、交渉は事前準備が8割がた、結果を決めるといってもいい。

二つ目は、心構えです。相手が回答をせかし、早くしろ!さもなくば…というと、多くの人は焦ります。しかしこれは絶対に焦ってはなりません。「早く回答しないと訴えるぞ」「早く決断しないと、あなたは千載一遇のチャンスを失う。」「今すぐ私に依頼しないと、あなたは逮捕される。一生が台無しになります」(これは、あまりよろしくない弁護士がたまに使う手法です)と、相手が言えば言うほど、でーんと構えてください。相手が急げば急ぐほど、こちらはゆっくりと構える。ゆったりした姿勢を見せる。これは絶対に守りましょう。

三つ目は、相手に対する敬意です。敬意というと、違和感があるかもしれません。しかし、相手への憎しみに凝り固まっていると見えないものもあります。逆に、相手を侮り馬鹿にしていては、勝てる交渉も勝てません。

 

最後に、交渉に疲れないこと。疲れて「ともかく早く終わらせたい」と思うようになったら負けはもうすぐそこです。交渉の過程を楽しむことです。もし、「そんな、この状況はとてもストレスフルで、楽しむなんてできない!一刻も早く解放されたい!」と思われるようなら、もう、弁護士にお任せになった方がいい。どんな交渉も一期一会です。興味をもって、その過程から学べるものはすべて学んでいきましょう。そこから、あなたは、或いは貴社は、大きく成長できます。私たちは常に、お客様と共に歩み、成長し、お客様とともに栄えていきたいと願っています。