— 国際相続 Q&A ー課税について

Q
日本の相続税はどのように計算されますか?
A
遺産総額から基礎控除額(3,000万円+600万円×相続人の数)を差し引き、法定相続分に応じて按分した上で累進税率を適用します。各相続人の取得額に応じて税額が決まります(相続税法15条1項,16条)。

Q
基礎控除額はいくらですか?
A
「3,000万円+600万円×法定相続人の数」が基礎控除額です(相続税法15条1項)。

Q
日本の相続税の最高税率はいくらですか?
A
最高税率は55%です(相続税法16条)。

Q
日本の相続税の申告期限はいつですか?
A
相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内に行うことになっています(相続税法27条1項)。

Q
延納または現物納税は可能ですか?
A
現金で納税できない場合、延納(分割払い)や物納(不動産などで納税)が認められることがあります。

Q
海外資産は日本で課税されますか?
A
被相続人や相続人が日本に住所を有している場合、双方が外国籍の一時居住者といった特段の事情がない限り,原則として海外資産も課税対象になります。

Q
相続人が海外に居住している場合はどうなりますか?
A
①被相続人が過去15年にわたり,一定の在留資格に基づき,日本滞在期間が10年を超える居住者である事実(一時居住者に該当しない事実)もしくは,②相続人が日本国籍を有し,かつ被相続人の死亡日から10年以内に日本国内に住所を有していた場合には,原則として海外資産も日本の相続税の対象となります(相続税法1条の3)。ただし租税条約の有無によって扱いが異なります。

Q
非居住者は日本で課税されますか?
A
日本に財産がある場合は課税されます。国外財産は原則として対象外ですが、日本国籍を有し,過去10年以内に日本に住所を有する相続人に該当する場合には例外規定があります。

Q
海外の不動産資産はどのように評価されますか?
A
現地評価額を基本としますが、日本の税務署は独自の評価を求めることもあります。たとえば,アメリカでは路線価格制度が存在しないため,鑑定士に不動産の相続開始時の価格の鑑定を依頼するのが一般的です。

Q
外貨預金や外貨証券の金銭評価額はどのように決定されますか?
A
相続開始時点の為替レートで日本円に換算して評価し,決定されます。

Q
二重課税とは何ですか?
A
同一の相続財産に対して日本と外国の両方で課税されることを意味します。

Q
二重課税は回避できますか?
A
相続税条約や外国税額控除を適用することで回避できます。

Q
日本と相続税条約を締結している国はどこですか?
A
現時点においては,米国、フランスなど限られた国のみです。条約がない国とは一般の税法制で処理します。

Q
日米相続税条約の特徴は何ですか?
A
米国資産については米国に、その他については日本に課税権を与え、両国の二重課税を回避できる点が特徴です。

Q
国と条約を結んでいない場合はどうなりますか?
A
各国の国内法に基づき課税され、日本で外国税額控除を申告する必要があります。

Q
米国では相続税はどのように扱われますか?
A
米国では,被相続人(遺産財団)が第1次的な納税義務者となり,被相続人が米国市民・居住者であれば全世界の遺産が課税対象となります。また、米国非居住外国人であっても米国資産には課税されます。

Q
フランスではどうですか?
A
フランスでも全世界に存在する被相続人の遺産全体に課税され、そのうえで相続人ごとに課税額が定まる制度が存在します。

Q
中国では相続税は課せられますか?
A
現在、中国には相続税制度はありません。

Q
イギリスでは相続税は課されますか?
A
イギリスでは「遺産税(Inheritance Tax)」があり、遺産全体に課税されます。

Q
ドイツでは相続税は課されますか?
A
ドイツでは,相続人ごとに課税され、基礎控除も相続人の関係に応じて異なります。

Q
海外からの贈与は日本の贈与税の対象になりますか?
A
日本に住所がある受贈者は、国外からの贈与でも課税対象になります。

Q
日本の贈与税の非課税額はいくらですか?
A
受贈者一人につき,年間110万円までが基礎控除として非課税です(相続税法21条の5,租税特別措置法70条の2の4)。

Q
贈与税と相続税はどのように関係しますか?
A
日本では,贈与税は相続税の補完と位置付けられ,贈与税の規定も相続税法に定められています。生前贈与により相続税課税を回避することを阻止するため,贈与税は生前贈与に対して相続税よりも高い税率を課しています。一方で,相続開始前3年以内の贈与財産価格は,相続税の課税価格に加算する制度(相続税法19条),相続時精算課税制度(相続税法21条の9~18)が定められています。

Q
相続時精算課税制度は国際的に適用されますか?
A
日本国内での制度であり、国際的な場面では適用が難しい場合があります。

Q
生前贈与は国際相続において有効ですか?
A
有効ですが、各国の贈与税制度や相続税との関係を考慮する必要があります。

Q
税務署は海外資産について把握していますか?
A
CRS(共通報告基準)により、海外金融口座の情報は税務当局に共有されています。

Q
CRSとは何ですか?
A
経済協力開発機構(OECD)が策定した「共通報告基準(Common Reporting Standard)」の略で、租税条約締約国の税務当局間で海外居住者の口座情報を自動的に相互交換する国際ルールです。

Q
CRSとは、外国口座が日本に報告されていることを意味しますか?
A
はい。加盟国間では非居住者の海外口座情報が自動的に共有されます。これにより,日本居住者の海外口座の情報についても,日本の税務当局のデータベースに蓄えられています。

Q
日本の税務当局は海外資産をどのように評価しますか?
A
現地評価額や市場価格を基準に日本円換算して課税します。

Q
資産を申告しなかった場合はどうなりますか?
A
期限内に申告しなかった場合,追徴課税や重加算税が課される可能性があります。また,虚偽の国外財産調書の提出や,正当な理由のない未提出がある場合は刑事罰の対象にもなります。

Q
二重課税を回避するにはどうすればよいですか?
A
租税条約や外国税額控除を活用しつつ、適切に申告することです。

Q
外国税額控除はどのように機能しますか?
A
海外で支払った相続税を日本の相続税から差し引く仕組みです。

Q
外国資産の共同所有は税務上有利ですか?
A
必ずしも有利ではありません。相続時には共有財産として評価されます。

Q
信託は税務計画に利用できますか?
A
はい。信託とは,委託者が自身の財産を法的に受託者に移転させ,受託者が委託者の指示に基づき受益者のために管理する仕組みです。信託財産は受託者の財産とは区別され、受託者の相続財産に含まれません。そのため,信託制度を活用することで課税や管理を効率化できる場合があります。

Q
生命保険は相続税対策に役立ちますか?
A
死亡保険金には非課税枠(500万円×法定相続人の数)が認められており、有効な相続税対策となります。

Q
日本の税理士は国際的な案件を扱うことができますか?
A
国際税務に精通した税理士であれば対応可能です。

Q
海外の税務専門家も必要ですか?
A
はい。現地の税制に沿った申告や手続きのためには現地専門家が不可欠です。

Q
日本と外国の確定申告は同時に提出しなければなりませんか?
A
必ずしも同時ではありませんが、期限を調整して二重課税を回避する必要があります。

Q
通貨の変動は相続税にどのような影響を与えますか?
A
相続時の為替レートで換算されるため、為替変動が課税額に影響します。

Q
遺産の分割方法は税金に影響しますか?
A
相続人の取得額に応じて課税されるため、分割方法は税額に直接影響します。

Q
日本人が米国の不動産を所有している場合はどうなりますか?
A
米国法で課税され、さらに日本でも課税対象となります。ただし,日米租税条約により,日米両国とも外国税額控除方式により二重課税を回避できます。

Q
フランスの銀行口座についてはどうですか?
A
フランスで課税され、日本でも申告が必要です。

Q
中国の不動産はどうなりますか?
A
中国には相続税がないため課税されませんが、日本では課税されます。

Q
英国企業の株式を相続した場合はどうなりますか?
A
英国の遺産税が課され、日本でも課税対象になります。

Q
相続人がドイツに居住している場合はどうなりますか?
A
ドイツで課税される可能性があり、日本でも課税対象になります。

Q
国際相続税の主なリスクは何ですか?
A
二重課税、申告漏れ、現地での税務調査リスクが挙げられます。

Q
日本の相続税は円で支払わなければなりませんか?
A
はい。日本円で納付する必要があります。

Q
外国相続税はどのように支払われますか?
A
現地通貨で納付するのが原則です。

Q
日本の相続税と海外の遺産税の主な違いは何ですか?
A
日本は相続人ごとに課税する「取得課税方式」、海外では遺産全体に課税する「遺産課税方式」が多い点です。

Q
税務で最も重要なことは何ですか?
A
二重課税を避けるための正しい申告と、専門家のサポートを受けることです。