相続 Q&A ー その他よくある質問

Q
祭祀財産についての承継者はどのようにして決まるのでしょうか。
A
祭祀財産は、祭祀を主宰すべき者が承継します(民法897条)。指定がある場合はその指定に従い、指定がない場合は慣習、慣習もない場合は家庭裁判所が決定します。
【承継順位と注意点】

  • ① 被相続人の指定
  • ② 地域慣習(例:長男)
  • ③ 家庭裁判所の審判

※ 相続人以外も承継可。遺産分割の対象外。

Q
死因贈与契約と遺贈とはどう違うのでしょうか。
A
死因贈与は生前の契約、遺贈は一方的な遺言行為です。どちらも死亡時に効力を発しますが、手続きや登記、税務上の扱いに違いがあります。
【比較一覧】

項目 死因贈与 遺贈
成立方式 双方の契約 遺言者の単独意思
撤回 制限あり(判例) 自由(民法1022条)
登記 直接移転可能 遺言執行者が必要
税金 相続税課税 同じく相続税課税

Q
死因贈与契約は、その後の取消は自由にできるのでしょうか。
A
原則として当事者の合意により解除が必要ですが、内容次第では一方的に撤回が可能とされる場合もあります(判例あり)。
【撤回・解除の可否】

  • 通常の贈与契約に比べて撤回が難しい(民法550条)
  • 判例上、贈与者が一方的に解除できるとした事例もあり
  • 契約内容(無償 or 有償、負担の有無)により異なる

Q
任意後見契約とはどのようなものでしょうか。
A
将来判断能力が不十分になった場合に備えて、信頼できる人に生活・財産管理を委任する契約で、公証役場での公正証書作成が必要です。
【任意後見契約のポイント】

  • 本人が元気なうちに契約締結
  • 発効は家庭裁判所が「後見監督人」を選任した時点
  • 法定後見制度より柔軟に対応可能

Q
任意後見契約とはどのようなことに注意したらよいでしょうか。
A
契約締結時の本人の判断能力確認が必須です。また、代理権の範囲は具体的に定める必要があります。
【注意点まとめ】

  • 公証人による面接 → 意思能力が不十分なら契約不可
  • 代理権は「預金引き出し」「医療契約」「不動産売却」など具体的に明記
  • 「財産管理全般」など曖昧な表現は避ける

Q
葬儀、埋葬方法や法要などの死後の事務を任意後見人に委任することはできるのでしょうか。
A
任意後見契約の中に死後事務を別条項として明記すれば、受任者に委任することが可能です。死後事務は契約終了後の行為であるため、法的強制力はありませんが、実務上は広く利用されています。
【実務ポイント】

  • 内容例:葬儀・納骨・遺品整理・各種解約手続き
  • 契約書に「第〇条 死後事務の委任」等として明記
  • 法的拘束力は限定的(倫理的・実務上の履行期待)

Q
任意後見人は誰にお願いしたらよいのでしょうか。
A
信頼できる個人や法人であれば誰でも選任可能ですが、民法で定められた不適格者には委任できません。受任者が辞任する可能性もあるため、バックアップ体制の検討も重要です。
【適任者と不適格者】

適任者 不適格者
親族・友人 未成年者
弁護士・司法書士 破産者
社会福祉法人 本人と訴訟関係にある者

※あらかじめ予備受任者を定めておくと安心。

Q
任意後見監督人の選任はどのようになされるのでしょうか。
A
本人の判断能力が不十分になった時点で、家庭裁判所により任意後見監督人が選任されます。これにより契約が効力を持ち、任意後見人の活動が開始されます。
【選任手続の流れ】

  • 申立人:本人・配偶者・4親等内親族など
  • 提出資料:任意後見契約書、医師診断書など
  • 審判期間:通常1〜3ヶ月
  • 本人同意が原則必要(意思表示困難な場合を除く)

Q
任意後見監督人の職務はどのようなものでしょうか。
A
任意後見監督人は任意後見人の行為をチェックし、家庭裁判所へ報告します。また、利益相反や緊急時には本人に代わって行為する権限も持ちます。
【主な職務と権限】

  • 任意後見人の財産管理を定期監督(年1回以上)
  • 利益相反時の代理(例:後見人が本人から不動産購入)
  • 緊急事態時の代理行為(例:医療費支払など)

Q
任意後見契約を締結している場合でも法定後見開始の審判の申立てができるのでしょうか。
A
原則として任意後見契約が優先されます。任意後見契約が登記されている場合は、家庭裁判所は法定後見開始の申立てを却下します。ただし、本人の利益のために特に必要と認められるときは例外的に法定後見開始の審判が可能です(任意後見契約に関する法律10条)。
【例外事例】

  • 任意後見人が医療同意に対応できず、緊急手術が必要なとき
  • 任意後見人に取消権がなく、悪質商法の被害が続くとき
  • 監督人未選任で保護が実質機能していない場合

Q
任意後見契約を締結している場合法定後見開始の審判の申立てができるとすればどのような場合でしょうか。
A
本人にとって任意後見よりも法定後見による保護が相当である場合、例外的に申立てが可能です。たとえば代理権の範囲が狭すぎる、悪質商法の被害が続いている、受任者が放置しているなどの事情があれば審判が認められることがあります。
【典型例】

  1. 本人の判断能力が衰え、監督人選任が放置されている
  2. 代理権の範囲が限定的で生活支援に支障がある
  3. 取消権・同意権がないため、被害防止が困難

Q
日本に在住する外国人は任意後見契約を利用できるのでしょうか。
A
日本に在住する外国人であっても、日本の法律に基づき任意後見契約を締結することは可能です。契約書は公正証書で作成され、日本語による説明が必要となるため、通訳の同席が一般的です。
【注意点】

  • 契約言語は日本語(通訳同席可)
  • 母国での効力はその国の法律に依存
  • 海外移住後に効力が不明確になる可能性がある

Q
「任意後見制度」の活用法と注意点は何ですか?
A
将来の認知症や判断能力低下に備えて、信頼できる人に代理権を与えておく制度です。判断能力があるうちに、公正証書で契約する必要があります。
【注意点】

  • 効力発生は家庭裁判所による監督人選任後
  • 契約内容はできるだけ具体的に(例:財産管理、医療契約の締結等)
  • 更新推奨:5年ごとに見直し

Q
尊厳死宣言公正証書とはどのようなものですか。
A
尊厳死宣言公正証書は、本人が「延命治療を望まない」との意思を公証人の前で表明し、文書化するものです。リビング・ウィルとして医療現場で判断材料となりますが、法的拘束力はなく医師の判断に委ねられます。
【作成のポイント】

  • 内容例:「人工呼吸器や心肺蘇生を望まない」「疼痛緩和は希望」
  • 公証人が本人の意思を直接確認(証人は任意)
  • 作成費用:約1〜2万円(証人費用別)
  • 5年ごとの更新が望ましい

Q
尊厳死宣言公正証書作成をする場合はどのようにしたらよいのでしょうか。
A
尊厳死宣言公正証書は、本人が自らの意思で延命治療の中止を希望する旨を、公証人の面前で陳述し、公証人がその真意を五感で確認して記録・作成するものです。必要書類は本人確認書類(運転免許証、印鑑証明書等)のみで、証人の同席は義務ではありませんが、信頼性を高める目的で推奨されます。
【ポイント】

  • 公証人が意思能力を厳密に確認(認知症疑いがあると作成拒否の可能性あり)
  • 証人・立会人なしでも作成可(任意)
  • 遺言公正証書と同様の形式を選ぶと安心

Q
尊厳死宣言公正証書作成の手数料はいくらでしょうか。
A
尊厳死宣言公正証書は「事実実験公正証書」に分類され、作成に要した時間に応じて手数料が発生します。1時間あたり11,000円(税込)が基本であり、超過する場合は時間単位で加算されます。
【注意点】

  • 1時間以内:11,000円(税込)
  • 1時間を超えるごとに追加11,000円
  • 事務手数料や証人費用(任意)等が別途かかる可能性あり

Q
郵便貯金の解約の仕方を教えて下さい。
A
ゆうちょ銀行では、相続手続の前に「相続確認表」の提出が必要です。これに基づき必要書類が案内され、すべて整えば代表相続人のゆうちょ口座へ払い戻されます。
【特徴・注意点】

  • 手続きは段階的(確認表提出 → 書類案内 → 書類提出)
  • 代表相続人のゆうちょ口座にのみ払い戻し(他行不可)
  • 現金での受け取り可だが高額時は非推奨
  • 手続き期間:1〜1.5ヶ月程度かかる

Q
相続した銀行預金の引き出し方(銀行の場合)
A
遺言公正証書がある場合は、検認手続き不要で直ちに執行できます。内容が口授(または筆談)で公証人により作成され、法的効力が非常に強いことが特徴です。これにより各相続人への分割払戻しが円滑に行えます。
【公正証書遺言の利点】

  • 検認手続不要(家庭裁判所の関与なし)
  • 公証役場で原本保管 → 紛失・偽造防止
  • 相続銀行に提出 → 個別引き出し対応可

Q
口座名義人が亡くなるとその人の金融機関の口座はどうなりますか。
A
金融機関の口座は、名義人が亡くなると凍結されます。ただし、2019年の民法改正により「預貯金の払戻制度」が創設され、遺産分割協議が成立していない段階でも、一定額(150万円または相続分の1/3×残高のいずれか低い額)までは払い戻すことができます(民法909条の2)。
【ポイント】

  • 原則:相続発生と同時に全口座が凍結
  • 例外:相続人単独で一定額まで仮払い可能(払戻制度)
  • 利用には戸籍・相続関係説明図・印鑑証明等が必要

Q
相続において寄与分や特別受給とはどういうものでしょうか。
A
寄与分とは、被相続人の財産の維持・増加に特別に貢献した相続人に、通常の法定相続分とは別に加算される相続分のことです(民法904条の2)。一方、特別受益とは、生前贈与や遺贈を受けた相続人がその分を他の相続人より先に受けたとみなされ、相続分から控除される仕組みです(民法903条)。
【実務上の注意】

  • 寄与分主張には証拠(介護記録、出費記録など)が必要
  • 特別受益は相続人間の公平調整を目的とする
  • 協議不調時は家庭裁判所が判断

Q
私は現在愛犬と生活をしています。私には身寄りがないため、私の亡き後、愛犬のことが心配です。そこで、愛犬も懐いている隣人に一定の財産を譲り、愛犬の世話をお願いしたいと思っています。どのようにしたらよいでしょうか。
A
遺言書を作成し、隣人に財産を遺贈するとともに、愛犬の世話を依頼する内容を明記する方法が有効です。信託契約や負担付き遺贈の形式をとることで、財産と引き換えに世話を確実に履行してもらう仕組みもあります。
【補足・実務例】

  • 「負担付き遺贈」(ペットの飼育を条件に財産を渡す)
  • 「遺言執行者」に愛犬の管理・確認役を指定する
  • 生前に隣人との合意書を作成しておくと安心