相続 Q&A ー遺言書について

相続の基本|遺言書について

Q
公証人による「口述の筆記」(口授)は、どのように行われているのでしょうか。
A
近時は、パソコン等を使用して「筆記」を作成するのが一般的となっています。
【補足】 公証人による「口述の筆記」(口授)は、伝統的には公証人が手書きで記録していましたが、現在ではパソコンなど電子機器を使うことが一般的となっています。

Q
公証人による「読み聞かせ」は、どのように行われているのでしょうか。
A
民法では、公証人が遺言者の口述を筆記し、遺言者や証人に「読み聞かせ」、または「閲覧」により確認してもらうこととなっています。
【補足】 「読み聞かせ」は、公証人自身が行うだけでなく、通訳者・第三者が行うことも許され、遺言者自身が読める際は遺言者が読めることもあります。

Q
公証人による「閲覧」は、どのように行われているのでしょうか。
A
「閲覧」は、遺言者が耳の聞こえない方でも遺言できるよう、民法改正で明記されました。
【補足】 平成11年の民法改正で、遺言者が耳が聞こえない方の場合、通訳人を通して「閲覧」で内容確認できるようになっています。

Q
遺言書の署名は戸籍の文字通り書かなければならないのでしょうか。
A
遺言公正証書の署名は、本人の同一性が示されれば、通称・雅号・ペンネームなども許されると解釈されます。
【補足】 戸籍名でなくても、本人の同一性が確保されれば、通称や雅号、ペンネームでの署名も問題ないとされます。

Q
遺言者が署名できない場合はどうすればよいのでしょうか。
A
民法969条4号ただし書きにより、公証人が遺言者の氏名を代書し、遺言者が印を押印する方法がとられます。
【補足】 署名できない理由(手の不自由、文盲、体調不良など)は、公証人が遺言書へ付記し、公証人が氏名を代書、遺言者が印を押印します。

Q
遺言者が外国人の場合はどうすればよいのでしょうか。
A
日本の法律では、外国人が遺言を作成する場合でも、一定の条件を満たせば有効とされます。例えば、公正証書遺言や自筆証書遺言などの形式に従う必要があります。また、遺言の署名や押印については、日本語の署名や押印が求められることが多いです。もし外国人が遺言を作成する場合は、適切な形式と翻訳、専門家の助言が必要です。
【補足】 外国人による遺言作成に関する誤解に注意。「外国人ノ署名捺印無資力証明二関スル法律」は存在しません。公証人や翻訳者の活用が推奨されます。

Q
遺言をするにはどの程度の判断能力が必要ですか。
A
遺言をするには、遺言者が意思能力を有している必要があります。特に成年被後見人が遺言をする場合は、事理を弁識する能力を一時的に回復した時に限られ、その際には医師2人以上の立会いが必要です。
【補足】 民法973条に基づき、成年後見人が遺言を行うには厳格な条件を満たす必要があります。医師の立会いや記録が求められます。

Q
遺言に年齢による制限はありますか。
A
遺言については、満15歳に達していれば、親権者等の同意なしに単独ですることができます(民法961条)。
【補足】 日本の民法961条により、15歳以上であれば遺言は可能です。未成年者でもこの年齢を超えていれば単独で遺言できます。

Q
相続させる遺言について説明してください。
A
相続させる遺言は、原則として特定の遺産を特定の相続人に単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたものと解釈されます(最判平成3年4月19日)。このような遺言がある場合、遺産分割協議を経ることなく、被相続人の死亡時に直ちに当該遺産は承継されます。ただし、遺言に反対の意思や条件が記載されている場合には、その条件が満たされた時点で承継されることとなります。
【補足】 遺産が明確に特定され、分割方法も指定されていれば、遺産分割協議の必要性はなく、受益相続人に直ちに帰属するという実益があります。

Q
相続させる遺言と遺贈とはどう違うのでしょうか。
A
不動産の遺贈を受けた者は登記をしないと第三者に対抗できませんが、「相続させる遺言」により不動産を取得した相続人は登記をしていなくても第三者に対抗できると解されています。ただし、法定相続分を超過する部分については登記が必要です(民法899条の2)。
【補足】 遺贈は「相続人以外」にも可能だが、「相続させる遺言」は基本的に相続人への承継を前提とする点でも異なります。

Q
全部相続させる遺言について説明してください。
A
全部相続させる遺言とは、遺言者が自らのすべての財産を特定の相続人に集中して相続させる旨を定めた遺言です。遺言者の意志により、一部の相続人にすべてを承継させる法的手段として有効です。
【補足】 全財産を一人に集中させる場合でも、他の相続人の遺留分に配慮する必要があります。争いを避けるため、付言事項等で理由を記載するのが望ましいです。

Q
割合相続させる遺言について説明してください。
A
共同相続人に対し、遺産のうち指定された割合の価値に相当する財産を取得させる遺言です。不動産は「各2分の1の共有として相続させる」といった記載や、株式は「AとBで各2分の1ずつ。端数はAが取得する」など、明確に記載することが重要です。
【補足】 遺産の分割を具体的に示すことで相続トラブルを予防する目的があります。記載内容はできる限り具体的にしましょう。

Q
特定相続させる遺言について説明してください。
A
遺言者が特定の財産を特定の相続人に相続させる旨を記載する遺言です。遺産分割協議を経ずに、預貯金の解約や不動産の移転登記が可能となります。
【補足】 手続きに必要な書類はケースごとに異なるため、専門家に確認しながら進めるのが安全です。

Q
父が長男の私に不動産を相続させる遺言を残していましたが、他の財産を希望する場合はどうすれば?
A
相続させる遺言がある不動産は原則として遺産分割の対象外ですが、他の相続人全員の同意があれば、遺言と異なる内容で遺産分割協議を行うことも可能です。その際は、公正証書にその旨を明記することで紛争防止に繋がります。
【補足】 実務上は、全員の同意と文書化が鍵。最高裁判例はなく、判断が分かれるため専門家への相談が推奨されます。

Q
父は長男に自宅を相続させる遺言を残していましたが、長男は既に死亡していました。この場合どうなりますか?
A
民法994条により、遺言者の死亡前に受遺者が死亡している場合、その遺言部分は無効となります。自宅は相続財産となり、他の相続人と遺産分割協議を行うことになります。長男に子がいれば、その子が相続人として分割協議に参加する可能性があります。
【補足】 遺贈部分のみが無効になり、他の部分は有効です。死因贈与も同様に、受贈者死亡により効力を失います。

Q
父は、自分の死後に母と同居して世話をすることを条件に、長男に自宅を相続させたのですが、父の死後間もなく母と別居して世話をしようとしません。この場合、他の相続人はどうすればよいのでしょうか。
A
このケースでは、父の遺言に「母と同居し世話をすること」という負担が付されていたと考えられます。これを「負担付遺贈」または「負担付相続させる遺言」といい、長男がこの負担を履行しない場合、他の相続人や遺言執行者は家庭裁判所に対して履行の催告や遺贈の取消しを請求することが可能です(民法1027条)。取り消された場合、その財産は他の相続人に帰属します。
【補足】 条件を履行しない場合でも、遺言は原則有効ですが、家庭裁判所が取り消しを認めたときは無効となります。判断には相当の証拠と手続が必要です。

Q
一定の割合で相続させる遺言と相続分の指定とはどう違うのでしょうか。
A
「相続分の指定」は、遺言で相続人ごとの取り分を割合または財産の種類で指定する制度です。法定相続分に優先して効力を持ちます。これに対して、「一定の割合で相続させる遺言」も広義では相続分の指定に含まれますが、個別の財産指定がなく、全体の割合だけを定める場合、遺産は共有状態となり、分割協議が必要になります。
【補足】 どちらの方法でも、遺留分の侵害には注意が必要です。特定財産を指定した場合には「特定相続」の性格を帯びることもあります。

Q
相続人は長男と二男ですが、私の遺産は全部を長男に相続させたいと考えています。この場合、私が負担している債務の相続関係はどのようになりますか。
A
遺言により遺産を全て長男に相続させたとしても、債権者に対しては長男と二男が法定相続分(各2分の1)で債務を承継します。二男が支払った場合には、長男に求償することができます。ただし、遺言に「債務も長男が負担する」と記載されていれば、相続人間の内部関係でも長男のみが債務を承継することになります。
【補足】 相続債務の承継は「対外的責任」と「相続人間の内部負担」に分けて考える必要があります。遺言書に明確に記載することが望ましいです。

Q
高齢者グループホームの仲間に、私の子どもたちは仲が悪いと愚痴ったところ、その仲間から、遺言を残しておいたほうがいいと言われました。私には多くの財産はないのですが、そのような場合でも遺言書を作成しておいた方がいいのでしょうか。
A
遺言書がなくても、民法に従って相続が行われますが、財産の分け方を巡って相続人同士が争うこともあります。そのため、たとえ財産が多くなくても、遺言書を作成しておくことで、相続に関するあなたの意思を明確に示すことができ、相続トラブルの防止につながります。
【補足】 財産の多寡にかかわらず、相続人同士の関係が複雑な場合は、遺言書の有無が相続手続きの円滑化に大きく影響します。

Q
遺言には決まりごとが多いようで敷居が高いのですが、知識のない私でも1人で書くことができるのでしょうか。
A
法律的な意味での遺言にはいくつかの決まりがありますが、自分ひとりで書くことは十分に可能です。ただし、正確に法的要件を満たすためには、内容や書き方に注意が必要です。
【補足】 自筆証書遺言を作成する際は「全文自筆」「日付」「署名・押印」の3点に注意しましょう。

Q
98歳の父が遺言を書くといっています。このような高齢の父でも1人で遺言を書くことはできるのでしょうか。
A
遺言者の適格には「満15歳以上」という要件のみがあり、年齢の上限はありません(民法961条)。ただし、遺言時に意思能力が必要であるため(民法963条)、後に無効とされないよう公正証書遺言の作成や医師の診断書取得などの対策が推奨されます。
【補足】 名前の言い間違い程度では意思能力を欠くとはいえませんが、遺言内容を理解できるかが重要です。医師の立会いや診断書があると安心です。

Q
遺言を書こうと思うのですが、「公正証書」にしなければならないのでしょうか。
A
遺言は公正証書でなくても作成できます。自筆証書遺言であれば、全文を自筆で書き、作成日、署名、押印をすれば有効です。ただし、訂正には厳格な方式があるため注意が必要です(訂正箇所への署名と押印など)。
【補足】 2020年の法改正により、自筆証書遺言も法務局で保管できる制度が開始されています。偽造リスクを減らすために活用が勧められます。

Q
遺言という形をとれば、どのようなこともできるのでしょうか。契約解除や子どもに介護を命じることも可能ですか?
A
遺言で法的効力があるのは「遺言事項」に限られます。相続分の指定、遺贈、推定相続人の廃除、未成年後見人の指定などです。「契約の解除」や「子に介護を求める」等は法的拘束力のない付言事項として記載することはできます。
【補足】 契約解除については、例外的に遺言執行者が解除権を行使できる契約がある場合に限り効力が及ぶことがあります。介護などは道義的要請として表現しましょう。

Q
一度書いた遺言の内容を変更できますか。書いた後で気が変わったり、状況が変わったりして、変更する必要が出てくることもあると思うのですが、二度と変更ができないとすれば、なかなか書くことに踏み切れません。
A
遺言はいつでも全部または一部を自由に撤回(変更)することができます。ただし、撤回には「遺言の方式」に従う必要があり(民法1022条)、口頭での撤回は無効です。新しい遺言で旧遺言を明示的に撤回するか、旧遺言と内容が矛盾する新しい遺言を作成すれば撤回とみなされます。
【補足】 例:旧遺言「Aに全財産」、新遺言「Bに全財産」とすれば、旧遺言は自動撤回されます。部分的撤回も可能です。

Q
父の遺言の中に、土地を「太郎にやる」という内容があります。長男である私の名前は「太郎」ですが、父の愛犬もまた「太郎」です。このように遺言の形式上はどちらとも判断つかない場合、遺言はどうなるのでしょうか。
A
遺言の内容が曖昧な場合は、その文言や文脈、家族関係などの事情を考慮して遺言者の意思を推定し、可能な限り有効な解釈を行います。愛犬の「太郎」は法的権利主体にはなれないため、人間である長男「太郎」への遺贈と解釈されるのが一般的です。
【補足】 動物に相続させることはできません。どうしてもペットの保護を意図する場合は「飼育費用の遺贈」などの形で、人に財産を託する方法を検討します。

Q
相続権のない者に私の財産を残すために、遺贈と死因贈与という方式があると聞いたのですが、両者はどう違うのでしょうか。
A
遺贈は遺言による一方的な意思表示であり、受遺者の同意は不要です。一方、死因贈与は契約であるため、贈与者と受贈者の合意が必要です。いずれも死亡を原因として財産が移転しますが、遺贈は遺言、死因贈与は契約に基づく点が主な違いです。
【補足】 死因贈与も相続税の課税対象です。また、遺贈には遺言執行者が必要ですが、死因贈与は契約に基づく履行が基本です。

Q
「全財産を配偶者に相続させる。もし配偶者が遺言者より先に死亡したときは、長男及び二男に均等の割合で相続させる。」という遺言の効力について説明してください。
A
遺言者より先に配偶者が死亡した場合、遺言のその部分は効力を失います。その際に「長男と二男に均等に相続させる」と記載していれば、これが予備的遺言として効力を持ちます。遺言者が再度遺言を作成できない場合でも、意思が反映されます。
【補足】 包括遺贈や「相続させる」という表現には法的効果があります。予備的遺言を併記しておくことは実務上非常に有効です。

Q
遺言が判明した後に、相続人の間で争いにならないかが心配です。その気持ちを遺言の中で表すことはできるのでしょうか。
A
遺言には法的効力を持つ「遺言事項」とは別に、法的効力はないが気持ちを伝える「付言事項」を記載することができます。「相続人同士で仲良くしてほしい」といった想いも記しておくことが可能です。
【補足】 付言事項は相続人の感情に配慮した柔らかい表現が有効です。例:「長年支えてくれたことに感謝しています」など。

Q
前に遺言をしたときから財産は変わっていないのですが、長男にあげるとしていた預貯金の一部を老人福祉のために役立ててほしいと思い、寄付をしたいと考えています。どうしたらよいでしょうか。
A
遺言者はいつでも遺言を撤回・変更できます。福祉施設等に寄付をしたい場合は、換金後の金額を遺贈する内容で新たに遺言を作成しましょう。金額を指定する方法、あるいは何分の1とする方法も可能です。
【補足】 寄付先の団体名を明確に記載しましょう。自筆証書なら日付・署名・押印、公正証書なら新たな手続きで撤回が可能です。

Q
前に遺言をしたときと財産がかなり変動した場合、新たに取得した財産、なくなった財産についてはどうしたらよいでしょうか。
A
遺言に記載された財産が現存しない、または受遺者が死亡している場合、その部分の遺言は無効になります。新たに取得した財産も遺言に記載がないと遺産分割協議が必要になるため、財産変動を見越した記載や定期的な見直しが望まれます。
【補足】 「全財産の○%を相続させる」など包括的な表現や、デジタル財産の扱いも明記するとより安心です。

Q
遺言の種類と書き方は?
A
主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。前者は自分で書き保管でき費用がかかりませんが、形式不備や紛失リスクがあります。後者は公証人が作成し、公証役場で原本が保管されるため、安全で確実です。
【補足】 2020年以降、自筆証書も法務局で保管可能に。財産目録はパソコン作成可。費用や安全性を考慮して選択しましょう。

Q
全部包括遺贈と割合的包括遺贈について説明して下さい。
A
全部包括遺贈は財産全体を、割合的包括遺贈は一定割合(例:全財産の1/3)を受遺者に遺贈するものです。両者ともに財産の個別指定は行わず、割合または全体で表現されます。包括遺贈では、債務も相続される点に注意が必要です。
【補足】 包括受遺者は相続人と同様に相続税申告が必要です。「不動産すべて」など具体的記載は特定遺贈とみなされます。

Q
妻と長年別居状態にある夫が、現在同居中の女性に財産の半分を遺贈する旨の遺言は有効でしょうか。
A
夫婦関係が法律上存続しているとしても、長年の別居により夫婦としての実態がなく形骸化していると評価できます。一方で、同居中の女性との関係が長期間にわたる場合、その実態が事実上の夫婦と評価され得ることがあります。

このような事情のもとで、遺贈が生活保全目的であり、遺留分を侵害していない場合は、公序良俗違反とはいえず、遺言は有効と解されます。ただし、同居期間が短く、事実上の夫婦といえる関係にない場合には、遺贈の目的が不倫関係の継続を意図したものと評価され、無効となる可能性も否定できません。

【補足】 東京高裁平成19年4月19日判決などは、実態に基づく評価を重視しており、同居女性への遺贈を一律に公序良俗違反とすることはありません。

Q
いわゆる跡継ぎ遺贈とはどのようなものですか。
A
受遺者の利益を期限や条件の成就によって他者に移転させる遺贈を指します。たとえば「A不動産を甲に遺贈する。甲が死亡した場合または乙が家業を継いだ場合、乙にA不動産を遺贈する」という形です。
【補足】

  • 法的性質:条件付き所有権移転(予約的遺贈)
  • 注意点:「家業を継ぐ」などの条件が曖昧だと無効リスクあり
  • 遺言執行者の指定が実務上必須
  • 信託の活用によりより確実な実現が可能

Q
後継ぎ遺贈の有効性についてはどう解されているのでしょうか。
A
後継ぎ遺贈は「所有権の安定性に欠ける」などの理由から無効とする見解が一般的です。第一次受遺者に所有権が完全に移転している以上、遺言者が再度その処分を指定するのは不自然とされます。ただし、条件付き所有権移転と解釈し、民法上有効とする説や判例も存在します。
【補足】

  • 無効説: 所有権の不安定性、民法の想定外行為
  • 有効説: 条件付き移転(民法985条)とみる。最判昭和56年3月20日は有効と判示。
  • 実務対応: 信託の活用がより確実。遺言執行者を明記し条件成就の確認と登記を委ねる。

Q
「遺言執行者」とはどういうことをする人ですか?
A
遺言執行者は、遺言の内容を実現する役割を担う者です。相続手続きを円滑に進める一方、遺産の大半を取得する相続人が指定されると他の相続人との間でトラブルの原因となることがあります。信頼性を重視し、弁護士や司法書士など第三者の指定が望ましい場合もあります。
【主な職務と注意点】

  • 預金の解約・不動産の名義変更
  • 遺贈の履行(財産引渡し)
  • 相続人廃除の申立て(家庭裁判所)
  • 自己への遺贈執行は不可(民法826条)
  • 報酬は遺言に記載なければ家庭裁判所が決定

Q
遺言執行者にはどのような人を選ぶのが適当でしょうか。
A
遺言執行者は、遺言者が遺言書に明示的に指定することができます。指定がない場合や辞退された場合は、家庭裁判所が選任します。未成年者と破産者以外なら誰でもなれますが、相続人を指定するとトラブルの原因になることもあるため、中立的な立場にある弁護士や司法書士を選任するのが望ましいとされます。
【補足】

  • 指定方法:「遺言執行者として〇〇を指定する」と記載
  • 家庭裁判所の選任: 利害関係人の申立てにより選任
  • 必要書類: 遺言書・相続関係図・候補者同意書等

Q
遺言執行者が指定されていない場合の遺言執行はどうするのでしょうか。
A
遺言執行者がいない場合、相続人(複数いる場合は共同で)が遺言を執行します。ただし、相続人の廃除やその取消といった遺言執行者によらなければならない事項については、家庭裁判所で遺言執行者を選任してもらう必要があります。
【補足】

  • 相続人による執行: 預金解約などは可能
  • 執行者が必要な例: 相続人廃除・取消/不動産登記の一部
  • リスク: 相続人間で協力できない場合は、調停や訴訟に発展する可能性

Q
預金の払戻しや不動産登記等に関する遺言執行者の権限はどのようなものですか。
A
民法1012条1項により、遺言執行者は「遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権利義務を有する」とされ、遺産管理、預金の払戻し、不動産登記などを行う権限を持ちます。
【具体例と注意点】

  • 預金: 単独で解約・払戻し可能(証明書提示)
  • 不動産: 所有権移転登記が可能(法務局に証明書提出)
  • 注意: 遺言の範囲を超える処分(例:対象外財産の売却)は不可

Q
遺言執行者がいる場合に相続人自身が遺産を処分することはできるのでしょうか。
A
民法1013条により、遺言執行者がある場合には、相続人は遺言の執行を妨げるような行為(財産の処分等)をすることができません。遺言執行者の権限は排他的であり、相続人は原則として遺産に手をつけることができません。
【補足】

  • 禁止される行為: 遺贈対象不動産の売却、指定預金の引出し
  • 例外: 緊急医療費などで、遺言執行者の事前同意がある場合

Q
遺言執行者にはどのような人を選ぶのが適当でしょうか。
A
遺言執行者は、遺言者が遺言書に明示的に指定することができます。指定がない場合や辞退された場合は、家庭裁判所が選任します。未成年者と破産者以外なら誰でもなれますが、相続人を指定するとトラブルの原因になることもあるため、中立的な立場にある弁護士や司法書士を選任するのが望ましいとされます。
【補足】

  • 指定方法:「遺言執行者として〇〇を指定する」と記載
  • 家庭裁判所の選任: 利害関係人の申立てにより選任
  • 必要書類: 遺言書・相続関係図・候補者同意書等

Q
遺言執行者が指定されていない場合の遺言執行はどうするのでしょうか。
A
遺言執行者がいない場合、相続人(複数いる場合は共同で)が遺言を執行します。ただし、相続人の廃除やその取消といった遺言執行者によらなければならない事項については、家庭裁判所で遺言執行者を選任してもらう必要があります。
【補足】

  • 相続人による執行: 預金解約などは可能
  • 執行者が必要な例: 相続人廃除・取消/不動産登記の一部
  • リスク: 相続人間で協力できない場合は、調停や訴訟に発展する可能性

Q
預金の払戻しや不動産登記等に関する遺言執行者の権限はどのようなものですか。
A
民法1012条1項により、遺言執行者は「遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権利義務を有する」とされ、遺産管理、預金の払戻し、不動産登記などを行う権限を持ちます。
【具体例と注意点】

  • 預金: 単独で解約・払戻し可能(証明書提示)
  • 不動産: 所有権移転登記が可能(法務局に証明書提出)
  • 注意: 遺言の範囲を超える処分(例:対象外財産の売却)は不可

Q
遺言執行者がいる場合に相続人自身が遺産を処分することはできるのでしょうか。
A
民法1013条により、遺言執行者がある場合には、相続人は遺言の執行を妨げるような行為(財産の処分等)をすることができません。遺言執行者の権限は排他的であり、相続人は原則として遺産に手をつけることができません。
【補足】

  • 禁止される行為: 遺贈対象不動産の売却、指定預金の引出し
  • 例外: 緊急医療費などで、遺言執行者の事前同意がある場合

Q
複数の遺言執行者を指定する場合に考慮すべきことがありますか。
A
民法1017条により、遺言執行者が複数いる場合は原則として過半数で職務を決します。可否同数の場合には、家庭裁判所に1名を追加選任して奇数にし、多数決で判断することが望ましいとされます。
【補足】

  • 奇数名を選任することで意思決定が円滑に
  • 役割分担を遺言書に明記するとさらに有効(例:不動産担当・預金担当)
  • 定期的な協議や連絡義務を遺言で定めるとトラブル防止になる

Q
遺言執行者は、復代理人を選任することができるのでしょうか。
A
民法1016条により、遺言執行者は自己の責任で第三者(復代理人)にその任務を行わせることができます。ただし、遺言で禁止されている場合は除きます。
【補足】

  • 「やむを得ない事由」:病気、遠方居住、専門性の高い業務等
  • 復代理人の行為については原則として執行者が責任を負う
  • 遺言書に「復代理人を置くことを禁ず」とある場合は不可

Q
遺言執行者の報酬についてはどのように定めたらよいのでしょうか。
A
民法1018条により、遺言者が報酬を定めていない場合は、家庭裁判所が状況に応じて報酬額を決定します。遺言で報酬を明示しておくとトラブルを避けられます。
【補足】

  • 相場: 相続財産の1〜3%程度
  • 記載例:「遺言執行者Aに対して200万円の報酬を支払う」
  • 遺言に記載がない場合: 遺言執行者と相続人等の協議 → 合意できない場合は家庭裁判所が決定

Q
遺言執行者の辞任に関する手続はどのようになっていますか。
A
民法1019条により、遺言執行者が辞任するには正当な事由があり、かつ家庭裁判所の許可を得る必要があります。
【補足】

  • 正当な事由: 高齢、病気、中立性の喪失など
  • 手続き: 家庭裁判所へ「遺言執行者辞任許可申立書」を提出
  • 補足: 後任者が必要な場合は併せて選任申立ても行う

Q
遺言執行者の解任に関する手続はどのようになっていますか。
A
民法1019条1項により、遺言執行者が任務を怠った場合や正当な事由がある場合、利害関係人は家庭裁判所に解任を請求できます。解任は家庭裁判所の審判によって行われます。
【補足】

  • 任務怠慢の例:6ヶ月以上手続きを放置
  • 不正行為:財産の横領・偏った執行
  • 手続き:利害関係人が家庭裁判所へ申立 → 審尋 → 解任審判
  • ※解任後は後任執行者の選任が必要(民法1019条2項)

Q
遺言に書かれた内容を実現するには、遺言の執行をする人を特別に決めておかなければならないのでしょうか。お金がかかるようでしたら、執行者を立てずにおきたいと思っています。
A
遺言執行者を置かなくても、遺言内容によっては相続人の共同行為で執行できます。ただし、排除や遺贈、不動産登記等を含む遺言には執行者が必要になるケースがあります。
【補足】

比較項目 調停 審判
主導権 相続人の合意 裁判官の判断
期間 6〜12ヶ月 3〜6ヶ月
結果 柔軟な解決が可能 法定相続分に準拠

※感情的な対立が強い場合は「調停」、早期解決希望なら「審判」がおすすめです。

Q
在日外国人が日本で遺言をする場合には、どこの国の法律が適用されるのでしょうか。
A
以下の5つのうち、いずれかの方式に従えば、日本においても有効です。①行為地法 ②国籍国法 ③住所地法 ④常居所地法 ⑤不動産所在地法
【補足】 国際私法(通則法)に基づき、柔軟に方式を選択できます。たとえば日本人がアメリカで日本方式(自筆証書)で作成しても有効。不動産は原則として所在地国の法律が優先されます。

Q
外国で作成された遺言書は、日本で有効でしょうか。
A
ハーグ遺言方式条約(1961年)により、外国で作成された遺言書でも、方式が有効な国の法律に従っていれば、日本で有効とされます。
【補足】

  • 要件:作成国の方式 or 遺言者の国籍国方式
  • 実務では日本語訳付きで法務局等へ提出
  • 公証人の署名・印認証など国によって異なる実務上のハードルあり

Q
日本人が外国で所有する財産について遺言をする場合には、どうしたらよいのでしょうか。

A
死因贈与契約については、民法554条により遺贈規定の準用が可能とされ、判例(最判昭和39年10月15日)でも撤回可能とされています。よって、外国にある財産であっても遺言や死因贈与で柔軟に管理可能です。

【補足】

  • 撤回方法:遺言で別内容を記す/受贈者と契約解除
  • 注意:撤回しない限り、履行請求が可能(民法555条)

Q
新しい信託法のもと、福祉型の民事信託が活用できると言われていますが、信託制度とはどのような制度なのですか。

A
信託とは、委託者が受託者に財産を移転し、信託目的に従って受益者のために管理・処分する制度です。信託法改正(2006年)により、個人による福祉型信託の活用も可能となりました。

【3者関係】

  • 委託者:財産を託す人(例:本人)
  • 受託者:管理する人(例:家族・信託会社)
  • 受益者:利益を受ける人(例:本人・配偶者)

Q
福祉型の民事信託とはどのようなものですか。

A
高齢者・障がい者等を受益者として、生活支援や財産管理を目的とした信託です。成年後見制度では対応が難しい柔軟な資産活用が可能です。

【成年後見との比較】

比較項目 福祉型信託 成年後見
財産処分 可(信託目的内) 家庭裁判所の許可必要
柔軟性 契約で自由設計 法定で硬直
費用 初期高(50〜200万) 月額2〜5万

Q
新しい信託制度では、高齢の配偶者や認知症の配偶者に遺す財産の管理を信託で契約し、あるいは遺言できると聞いていますが、どのような仕組を活用するのですか。

A
信託契約または遺言を用いて、高齢や認知症の配偶者の生活支援を目的とした財産管理を行うことができます。これは「遺言代用信託」や「受益者連続型信託」として設計可能です。

【実務例】

  • 自宅・預金を信託財産に設定
  • 「配偶者が認知症になったら、子が受託者として介護費用を支出」
  • 死亡後は残余財産を子に承継(受益者連続型)

→ 後見制度より柔軟な財産活用が可能です。

Q
新しい信託制度では、特定の財産を確実に親族につないで遺す、後継ぎ遺贈型の信託制度があると聞きましたが、どのような制度ですか。

A
後継ぎ遺贈型信託とは、ある財産を最初の受益者が亡くなった後に、次の親族へと順に引き継がせる制度です。これにより、財産を世代を超えて確実に承継することが可能になります。

【活用例】

  • 委託者:父
  • 一次受益者:妻(父の死後、生活費を受給)
  • 二次受益者:子(妻の死後、残余財産を承継)

Q
遺言の公正証書作成はどのように行われますか。

A
遺言者が公証人に内容を口述し、公証人が公正証書として作成します。証人2名の立会いが必要で、公証人は本人と必ず面談し意思確認を行います(民法969条)。

【注意点】

  • 証人は相続人・受遺者でない成人を選ぶ
  • 証人も署名・押印が必要

Q
公正証書で遺言をするメリットは何でしょうか。

A
偽造・紛失の心配がなく、家庭裁判所の検認も不要です。内容の実現性が高く、散骨など葬送方法も記載可能です。

【補足】

  • 散骨は墓地埋葬法の適用外
  • 自治体によっては規制あり。具体的な方法や業者も明記すると確実