相続 Q&A ー相続の基本

相続の基本|よくある質問

Q
相続方法にはどのようなものがありますか。

A
相続方法は、「単純承認」(民法920条)「相続放棄」(民法938条)「限定承認」(民法922条)の3種類とされています。簡単に説明しますと、プラスもマイナスの財産も全て相続するのが単純相続です。一切相続をしないのが、相続放棄です。そして、受け取った遺産の範囲内で借金や負債を返済に充当するのが限定承認です。

【補足】 限定承認は相続人全員の共同申告が必要(一部の放棄は不可)。単純承認は債務超過の場合でも全ての債務を引き継ぐリスクあり。

Q
遺産分割の対象となる相続財産はどこまで、どのように把握すればいいですか?

A
相続は遺産分割から始まります。分割対象となる被相続人(死亡した人)の財産をすべて把握しないと相続は円滑に進みません。被相続人の債権・債務関係を全て調査する必要があります。

【補足】 対象はプラス財産(預貯金・不動産等)とマイナス財産(借金・未払い税金等)の全て。調査方法: 通帳・契約書の確認、法務局での不動産登記調査、信用情報機関への照会(借金の有無)

Q
親の家の評価はどのようにすればいいですか?

A
親の家の評価方法で合意できないと、遺産総額がいくらなのか認識にズレが生じて遺産分割が進まなくなるばかりか、深刻な争いに発展する可能性もあります。1つの解決方法として、土地については路線価で評価することが挙げられます。建物については、相続税の申告では固定資産税評価額を使います。従って遺産分割協議でも建物の評価は固定資産税評価額を用いるのが良いと考えられます。

【補足】 路線価と固定資産税評価額は時価より低めの評価となるため、相続人間で時価評価を希望する場合は不動産鑑定士による鑑定評価も選択肢となる。

Q
債務を相続する必要はありますか?

A
必ず相続しなければならないというわけではなく、「相続放棄」(民法915条)や「限定承認」(民法922条)といった方法もあります。ただし、相続放棄をする場合には「自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内」に決定する必要があります。また、限定承認は相続人が複数人いる場合には、共同相続人の全員が共同して行う必要があります(民法923条)。

【補足】 3ヶ月の熟慮期間は家庭裁判所に申し出れば延長可能だが、早めの判断が望ましい。限定承認は手続きが複雑なため専門家への相談を推奨。

Q
債務や葬儀費用は相続財産から差し引けるそうですが、注意点はありますか?

A
債務は、被相続人が死亡したときに確実に負担しなければならないものしか引けません。墓石や墓地の購入費用は葬儀費用に含まれないので注意が必要です。また、葬儀費用は、相続後に発生しているため、相続債務には当らず、葬儀会社との関係では、葬儀会社と契約した人物が債務を負担する事になる点に注意が必要です。

【補足】 葬儀費用は相続財産から直接控除できないが、相続人間で負担割合を協議して決めることが可能。債務控除には領収書などの証拠書類が必要。

Q
誰が相続人になりますか?

A
協議できるすべての相続人で話し合い、合意しないと遺産分割協議は成立しません。前の配偶者との間の子どもや婚外子で認知した子どもも含め、相続人を調べて確定させましょう。

【補足】 相続人調査には被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本が必要。婚外子がいる場合は認知の有無を確認。
Q
被相続人の前の婚姻時代の子どもや婚外子が相続にかかわってくる場合はどうすればいいでしょうか?

A
その相続人を参加させずに遺産分割協議をしたり、相続分を不当に減らしたりといったことは許されません。相続人が認知症で判断能力を欠く場合には、有効な法律行為を行う事ができない為、「成年後見人」を立てましょう。

【補足】 成年後見人の選任には数ヶ月かかるため、相続手続き開始前に手配することが望ましい。

Q
相続対策をどの専門家に相談したらいいでしょうか。

A
遺産分割対策は弁護士や司法書士、相続節税対策や納税資金対策は税理士、相続手続きは司法書士や行政書士が適任かと思いますが、1か所で済ませられる方法もあります。

【補足】 最近では相続専門の「士業チーム」を組んでいる事務所もあり、ワンストップで対応可能。

Q
弁護士、税理士をどのように活用すればいいですか?

A
相続紛争の解決や相続人の間のあっせんは弁護士しかできません。相続税の納税・申告が必要ならば税理士に依頼する必要があります。

【補足】 税理士は相続税申告だけでなく、納税資金対策(生命保険活用等)の相談にも対応可能。

Q
相続放棄について教えて下さい。

A
被相続人の遺産のうちマイナス財産が多い場合には、相続放棄をすることが出来ますが、原則被相続人の死亡から3か月以内に家庭裁判所に申立てを行なう必要があります(民法915条)。3か月という期間は、遺産を相続するか、放棄するかを考えるために設けられた熟慮期間であるためこの期間に、故人の遺産や借金の額を調査し、相続するか放棄するかを決定する必要があります。そして、一度相続放棄をすると原則、撤回・取消が出来ないため慎重に行う必要があります。

【補足】 相続放棄後も故人の葬儀費用など「祭祀主宰者」としての義務は残る場合がある。

Q
私には少しだけローンが残っているマンションがあります。このローンには保険がかけられていないため、私の死亡保険金でローンの残額分が補填されることがありません。このマンションを妻に相続させ、妻がローンの残債務を支払うこととし、子どもたちにはローンの負担をさせたくないのですが、どのようにしたらよいでしょうか。

A
ローンの支払いを特定の人に限定する内容の遺言は、債権者の承諾がなければ法的拘束力はありません。奥様が単独でローンを引き継ぐには、債権者との交渉と承諾が必要です。債権者が承諾しない場合、子どもたちにも返済義務が生じる可能性があります。

【補足】 債権者との交渉は遺言執行者が行うことも可能。住宅ローン減税の適用可否も確認が必要。

Q
私の相続人は事故により車椅子の生活を余儀なくされた1人息子だけです。保険金は入ってきたものの息子の今後の生活が心配です。そこで、私の死後には所有しているマンションの管理を第三者にお願いし、その収益を息子の生活費にあててもらいたいのですが、どのようにしたらよいでしょうか。

A
遺言信託を利用することで、マンションの管理・収益活用を第三者に任せ、息子の生活費に充てることができます。信託は契約または遺言で設定可能ですが、公正証書遺言で行うと確実です。信託の受託者には信託銀行など財産管理能力が高い機関を指定しましょう。

【補足】 信託では療養看護の義務は含まれないため、必要に応じて負担付遺贈を併用するなど、別途対応が必要です。

Q
私は、今の妻とはお互いに再婚同士です。私には前妻との間に1人息子がおり、妻にも2人の連れ子がいて、妻との間には子どもはいません。私は、妻の連れ子も私の息子同様に可愛がってきたので、同じように財産を残したいのですが、どうすればよいでしょうか。

A
父親や母親の再婚相手との間に生まれた子どもには相続権がありますが、再婚相手の連れ子にはただちに相続権が認められるわけではありません。そのため、奥様の連れ子をあなたの養子にした上で、法定相続分どおりに相続させる旨の遺言を書き、あなたの気持ちを付記しておくとよいでしょう。

【補足】 養子縁組には相手方の同意が必要で、15歳以上の連れ子は自身の同意も必要。遺言では養子縁組の意思表示も可能だが、死後養子は認められていない。

Q
私は妻亡き後、1人息子である長男夫婦と私が所有する家で同居していましたが、その長男も亡くなりました。私には他に子や孫はおらず、私の姉妹がおりますが、いずれも顔すら見せてくれません。晩年はこの長男の嫁に大変お世話になったので、私の家も含めてこの嫁に財産を譲りたいのですが、どうしたらよいでしょうか。

A
亡き長男の嫁はあなたの「子」でない以上、法定相続人とはなりません。そこで①長男の嫁に家屋等財産を生前贈与する、②同じく長男の嫁に家屋等財産を遺言によって遺贈する、③長男の嫁と養子縁組をして、「子」として家屋等を嫁に相続させるという方法が考えられます。①の方法では逆にあなたが家を追われてしまう可能性があります。また、③にすると、別途そのための手続が必要となります。そこで、②の遺言によって遺贈するという方法がよいといえましょう。

【補足】 長男の嫁への生前贈与には贈与税が、遺贈には相続税が課税される。養子縁組の場合、相続税の基礎控除額が増えるメリットがある。

Q
私は、妻と10年間夫婦として生活をしてきましたが、婚姻届は出しておらず、いわゆる内縁関係です。私たちの間に子どもはいませんが、私の父と弟が健在です。この内縁の妻に不動産などの財産を残したいのですが、どのようにしたらよいでしょうか。

A
内縁の妻は「配偶者」とはいえず相続人とはなりません。そこで内縁の妻に遺贈をするという遺言を書き、これが遺留分を侵害するような場合には、遺留分減殺の順序も指定しておくとよいでしょう。本件の法定相続人は、あなたの父のみです。そこで、全体財産の3分の1は遺留分として残さなければならないので、それを超えて内縁の妻に遺贈するようでしたら、遺留分減殺の順序を指定しておかれるとよいでしょう。例えば、「不動産は残して預貯金から減殺して欲しい」とか、その旨を遺言に記載しておくとよいでしょう。遺言の執行は相続人が行ってよく、必ずしも遺言執行者を選定しなければならないわけではありません。しかしながら、相続人のうちの1人がこれを行うとなると、共同相続人間で争いがある場合や相続人の見知らぬ人物への遺贈がなされる場合等、関係者の意思統一が図りにくく遺言の執行に困難が生じる場合もあります。このような場合には遺言執行者を指定しておくべきです。本件でも内縁の妻が遺贈を受けた不動産の登記をする場合、相続人である被相続人の父親と内縁の妻との共同申請でおこなわなければならず、被相続人の父親が協力してくれない事態も生じかねません。このような自体に備えて遺言執行者を指定しておけば、遺言執行者と内縁の妻との共同申請で登記をすることができます。

【補足】 内縁配偶者への遺贈には相続税がかかり、更に遺留分減殺請求を受ける可能性がある。不動産の遺贈では登記費用も考慮が必要。

Q
私には愛人との間に認知をしていない未成年の息子がいます。この子には不憫な思いをさせてしまっていますが、せめて親として最期に財産を残したいと考えています。どのような遺言にすべきでしょうか。

A
認知していない隠し子には遺産相続権がありません。認知をされていれば、被相続人との親子関係が法的に明らかになるので、直系卑属として遺産相続をすることが出来ます。遺言により認知をした上で、相続させるか、死亡前に遺言書を利用し、認知していない子に相続する旨を記載するとよいでしょう。

【補足】 遺言認知には戸籍記載が必要で、認知後は養育費請求される可能性もある。隠し子が未成年の場合は親権者を指定する必要がある。

Q
私の夫は、すぐに私に暴力を振るいます。生活費も入れてくれなかったので離婚も考えましたが、応じてもらえませんでした。私は親から相続した財産があるのですが、私が死んだときに夫に相続させないようにすることはできますか。

A
推定相続人を廃除する意思表示を遺言ですることができます。配偶者・子等の相続人には民法上法定相続分が定められています。これと異なる相続分にしたい場合には、遺言に相続分を明記しておけばその相続分が法定相続分に優先されます。これを相続分の指定といいます。配偶者は遺留分権利者であるため、一定の割合の相続分を残しておかなければなりません。しかしながら、事情によっては特定の相続人の相続分をゼロにして遺留分も残したくない場合もあり得るでしょう。このような場合「推定相続人の廃除」(民法892条)という手段も考えられます。「推定相続人の廃除」とは、①遺留分を有する推定相続人が被相続人を虐待し、もしくはこれに重大な侮辱を加えたとき、または、②遺留分を有する推定相続人にその他著しい非行があったときは、このような推定相続人から相続権を喪失させる制度です。廃除は家庭裁判所に申し立てることもできます。しかし、生前に廃除を申し立てたがためにさらに激しい暴力を振るわれてしまう危険もあります。そこで、遺言により秘密裏に廃除の意思表示をした方がよい場合もあるでしょう。

【補足】 廃除の申立てには虐待の証拠(診断書や警察記録等)が必要。DVが深刻な場合は保護命令と併せて廃除を申し立てるのが効果的。

Q
私は5年前に離婚し、長男は私が、幼い次男は元妻が引き取りました。元妻は生活が厳しかったようなので、決められた養育費以外にも次男のためと思い何くれと援助をしてきました。そんな中、2年前まとまったお金を貸して欲しいと言われ、次男のためと思い300万円を元妻に貸しましたが返済されていません。元妻の債務は免除するので、これをもって次男への相続としたいです。

A
相続・遺産分けを考える際、あなたが生前大変お世話になった人やあなたが亡くなった後の生活に不安が残る人に財産の大半を残したいと考えることがあるかもしれません。しかしそのような内容の遺言を作成しても、他の相続人から遺留分減殺請求権を行使されてしまえばあなたの遺志は実現されないことになります。相続開始前に他の相続人に相続放棄させてしまえばあなたの遺志を実現できるかもしれませんが、民法はこれを認めていません。そこで、この場合の対処として、相続開始前に他の相続人に遺留分の放棄をしてもらうという手段が考えられます。遺留分放棄の効果は、他の遺留分権利者の遺留分が増えるのではなく、被相続人が自由に処分できる割合が増えるのです。よって、被相続人の意思が実現しやすくなります。但し、相続開始後に遺留分放棄をする場合には単純にその旨の意思表示で足りるのですが、相続開始前に遺留分放棄をする場合には、家庭裁判所に遺留分放棄を申し立て、許可を得る必要があります。真に自由意志に基づくものか等を家庭裁判所がきちんと判断した上で許可を出すか否かが判断されます。また、遺留分を侵害しない範囲で遺言書を作成することもできます。さらには、遺言書の付言事項として「遺留分減殺請求をしないでほしい」旨の意思表示をすることにより、遺留分減殺請求を防止する事が可能な場合もあります。ただし、この付言事項には法的な拘束力はないことに注意が必要です。

【補足】 生前贈与や生命保険の活用で遺留分対策を行う方法もある。遺留分放棄には家庭裁判所の審査があり、強要された場合は無効。

Q
特定の財産を遺贈する遺言がある場合に、相続人が限定承認をした場合の相続財産管理人と遺言執行者の関係はどうなるのでしょうか。

A
限定承認がされている場合に、財産の管理人が選任されることがあります。限定承認があると、相続債権者に対する弁済が受遺者に対する弁済よりも優先するので、相続財産管理人による管理清算権が先行し、その結果、遺言執行者の管理処分権は休止した状態となります。限定承認の場合、相続財産により相続債務の弁済に十分であり、かつ、遺贈の履行もできる場合には、相続財産管理人と遺言執行者のいずれもが遺贈を執行してもよいように見えますが、相続財産の残余財産で全ての遺贈の履行ができないような場合には、配当弁済を行う以外に方法はありませんから、その場合には、相続財産管理人が清算手続として、遺贈(配当)を行うべきとするのが民法の考えです。したがって、遺言執行者の管理処分権は、限定承認の清算手続が終了するまで休止した状態となると考えるのが妥当と思われます。

【補足】 限定承認では相続財産管理人が優先的に清算を行うため、遺言執行者は管理権限を一時停止する。残余財産がある場合のみ遺贈が実行される。

Q
特定の財産を遺贈する遺言がある場合に、相続人が不存在であった場合の相続財産管理人と遺言執行者の関係はどうなるのでしょうか。

A
相続人の存在が明らかでない場合には、相続財産は法人とされ、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任し、遅滞なくこのことを公告しなければならないとされています。そして、この相続財産管理人に関しては、不在者の財産の管理人に関する規定が準用されます。この相続人存在の相続財産管理人の任務は、相続財産の清算であり、そのため、相続人の捜索、相続債権者に対する弁済及び受遺者に対する弁済を行います。相続人不存在の場合の相続財産の処理が法定相続の一環ないし延長線上にあること等の理由から、遺言執行者が存在する場合には、相続財産管理人ではなく、遺言執行者によって遺言執行がなされるべきとする考えがあり、遺言執行者による執行が終了した場合には、相続財産管理人により最終的な清算手続が行われることになります。

【補足】 相続人不存在の場合、相続財産管理人が選任されても、遺言執行者がいる場合は遺言執行が優先される。最終残余財産は国庫に帰属する。

Q
親や配偶者らが死亡した場合、どのような手続きが必要ですか?

A
煩雑な手続きに直面します。健康保険、公的年金などは社会保険の手続きや、不動産、金融資産の相続にともなう名義変更のほか、所得税や相続税の申告も必要になります。

【補足】 健康保険は14日以内、国民年金は10日以内の手続きが必須。放置すると保険証が使えなくなるなど日常生活に支障が生じる。

Q
相続手続きで必要な書類にはどのようなものがありますか?

A
死亡診断書、戸籍、住民票、印鑑証明書、遺言、遺産分割協議書、念書・同意書が、相続手続きの多くの場面で必要になる書類です。

【補足】 健康保険は14日以内、国民年金は10日以内の手続きが必須。放置すると保険証が使えなくなるなど日常生活に支障が生じる。

Q
相続の手続きはどのようなものでしょうか。

A
・7日以内に死亡届の提出
・10日から14日以内で公的年金・健康保険の手続き(厚生年金は10日以内)
・なるべく早急に行う必要のある手続きとして、死亡保険金の請求手続き、公共料金等の引き落とし口座の変更等、相続人の鑑定、戸籍謄本等の取得、遺言書の有無の確認、自筆証書遺言の検認手続き、相続財産の調査、把握
・3カ月以内に、相続放棄、限定承認、単純承認の選択、葬儀の実施、遺言書の確認、相続人の調査、遺言書の検認、相続財産の調査
・4か月以内に、被相続人の所得税の申告・納付(準確定申告)
・速やかに行う必要のある手続きとして、遺言書がない場合には遺産分割協議の実施、遺産分割協議書の作成、遺産分割協議の際の特別代理人の選任、預貯金、有価証券等の解約や名義変更、換金、不動産の所有権移転登記、各種名義変更
・10か月以内に相続税の申告・納付
・1年以内に遺留分減殺請求
・3年以内に配偶者相続税軽減手続き

【補足】 2024年4月から相続登記が義務化され、3年以内の未登記には10万円以下の過料が科される可能性がある。特に不動産の名義変更は早期対応が必須。

Q
被相続人の「戸籍謄本」を集めるにはどうすればいいですか?

A
相続手続きでもっとも必要とされるのが戸籍謄本で、取寄せるのはかなり大変なので計画的に進めましょう。相続で必要となる戸籍謄本には3種類あります。最新の情報まで記載された現に効力がある戸籍謄本のほか、「改正原戸籍謄本」や同じ戸籍にいた全員が死亡したため閉鎖された「除籍謄本」もあります。被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本を見ないと全ての相続人を確定することができません。

【補足】 戸籍収集は本籍地の市区町村役場で行う。改正原戸籍や除籍謄本が必要な場合、複数回の請求が必要となることが多い。

Q
相続手続きを専門家に頼む必要はあるのでしょうか?

A
複雑な手続きがあり、手続き先の数が多いので依頼するほうがいいかもしれません。ただ、報酬がどれくらいかかるのかを事前に忘れずに確認しましょう。

【補足】 司法書士は登記手続き、税理士は税務申告、弁護士は紛争解決と専門分野が分かれる。総合的な相続サポートを謳う事務所も増加中。

Q
「相続登記」を怠るとどうなりますか?

A
何代か前の所有者名義のまま放置されている場合は、法定相続人が多数にのぼる可能性があり、遺産分割協議ができなくなっているような場合も少なくありません。加えて、2024年4月1日より、相続登記の義務化が始まり、不動産登記法改正後は「相続の開始および所有権を取得したと知った日から3年以内」に相続登記が義務付けられます。罰則として、10万円以下の過料を求められる可能性もあるため、相続登記は怠らないよう注意が必要です。

【補足】 相続登記未了の不動産は売却や融資の担保にできず、固定資産税の納税通知が名義人に届かないなどの不都合が生じる。

Q
社会保険の手続きはどれくらいありますか?

A
「遺族年金」の請求などは早めに手続きを済ませておかないと生活資金に影響が出る可能性があります。社会保険労務士にも相談することをお勧めします。

【補足】 遺族年金の請求期限は5年だが、早めに手続きしないと支給開始が遅れる。年金事務所での手続きには死亡診断書のコピーが必要。

Q
死亡保険金を受け取ったことは特別受益となるのでしょうか。

A
保険金受取人が相続人の場合、保険金額が特別受益とみなされるケースがあります。特に高額な保険金は遺留分侵害の原因となる可能性があります。

【補足】 最高裁判例では、保険金額や遺産全体とのバランスなどを総合考慮し、著しい不公平があると判断される場合に、持戻しの対象となることがあるとされています。

Q
死亡退職金について、遺言で受取人の指定をすることはできるのでしょうか。

A
退職金支給規定がある場合、遺族の固有の権利として支給されるため、相続財産に含まれないとされるのが一般的です。規定がない場合には、事前に勤務先に確認の上、遺言で指定できるか検討が必要です。

【補足】 退職金規定がある企業では就業規則が優先する。受取人指定可能か事前に人事部門に確認が必要。規定がない場合は相続財産となる。

Q
被相続人が生命保険に加入していた場合はどうすればいいですか?

A
死亡保険金は比較的早く受け取れるため、早めに保険会社に連絡して請求手続きを行うことが重要です。日頃から保険会社の連絡先や内容を家族で共有しておきましょう。

【補足】 保険金請求には保険証券と死亡診断書が必要。受取人が複数いる場合は全員の署名捺印が必要な場合がある。

Q
死亡した親の預金を引き出したいのですが問題ありますか?死亡保険金は使ってかまいませんか?

A
死亡保険金は受取人の固有の権利として相続財産に含まれないため、使用しても差し支えありません。ただし預金については、被相続人の死亡後に金融機関が口座を凍結するため、遺産分割が完了しない限り通常は引き出せません。民法第909条の2により、一定額(最大150万円)までは相続人単独で引き出す制度もあります。

【補足】 預金の早期引き出し制度(上限150万円)は金融機関ごとに手続きが異なり、相続人全員の同意書を求められる場合があります。

Q
私は一代で株式会社を築き上げ、この会社は子どものように大切です。しかし息子は大企業のサラリーマンとなり私の会社を継ぐつもりはないようです。そこで、会社の存続を第2に考えて信頼できる従業員に会社を譲りたいのですが、どうしたらよいでしょうか。

A
事業承継の方法として、従業員への承継(MBO)を検討することができます。遺言で株式の譲渡を指定することも可能ですが、生前の段階で株式の贈与や信託、持株会社の設立などを活用し、円滑な移行を図ることが望まれます。専門家への相談が不可欠です。

【補足】 自社株の分散や税負担を防ぐため、事前に株価評価や遺留分対策を含めた「事業承継計画」を立てることが重要です。中小企業庁の支援制度も活用できます。