国際相続とは
国際相続とは、相続手続や相続財産に外国の要素が関係する場合を指し、以下の4つのパターンに分類できます。
- 被相続人は日本人で相続人も日本人だが、相続財産に外国の資産が含まれる場合
例:外国に所在する不動産、外国の銀行預金、外国政府や企業が発行した国債・株券・社債・その他の有価証券など。 - 被相続人が外国人で外国在住だったが、日本国内に相続財産が存在する場合
例:外国籍の被相続人が日本にある銀行口座に預金や日本に不動産を所有しているケース。 - 被相続人が外国籍だが、日本に居住していた場合
日本に住所または居所を有する外国人が死亡した場合。 - 相続人の中に外国人が含まれる場合
例:夫が日本人で妻が外国人、夫が死亡して外国籍の妻が相続人となるケース。
相続準拠法の基本原則
日本で相続手続きを行う場合、相続全般については「被相続人の本国法」(被相続人の国籍の国の法)が適用されるのが原則です(法の適用に関する通則法第36条)。
具体的な適用例
- 日本人が海外で死亡した場合
被相続人が日本国籍であれば、日本に住所や居所がなくとも日本法が相続に適用されます。 - 外国人が死亡した場合で、その住所または居所が日本にある場合
本国法(その外国人の国籍国の法)が優先されますが、本国法に「居住地法による」との規定があるときには日本法が適用されます(「反致」といいます)。 - 日本人が外国に財産を有する場合
日本法が相続全般に適用されるのが原則ですが、特に不動産については所在国の法により、所在国法が適用される場合があります。
外国法が本国法となる場合の取扱い
被相続人の国籍が外国の場合、その国の相続法の内容によっては、
「被相続人が日本に居住していれば日本法を適用する」と定められていることがあります。
このように、外国法の「反致」の規定により、日本法に差し戻される場合があります。
相続準拠法で決まる事項
相続準拠法(通常は被相続人の本国法)によって定まるのは、主に以下の事項です。
- 相続人となるべき者の範囲
- 相続人間の優先順位
- 遺言の有効性(内容・方式ともに)
- 代襲相続(子が先に死亡している場合に孫が代わって相続できるか)
日本の裁判所での手続き
日本の裁判所で手続きを行う場合、被相続人が死亡時に日本に住所または居所を有していたときは、国籍に関わらず相続の手続きを行うことができます。
また、日本国籍を有する者が外国で死亡した場合でも、死亡時に日本に住所または居所を有していた場合、または日本国内に遺産がある場合は、日本の裁判所で相続手続きを行うことが可能です。
もっとも、外国に居住していた日本人については、当該外国でも相続手続きが行える場合があり、その場合には手続きの重複が問題となることがあります。
総括
国際相続では、被相続人の国籍法(本国法)を基準にするのが原則ですが、
- 財産の所在地国法
- 本国法たる外国法の規定(反致)
によって実際に適用される法律が変わることがあります。
そのため実務上は、「本国法 → 外国法 → 反致の有無 → 各国の強行法規(特に不動産)」という流れで検討する必要があります。