事業承継と残業代

投稿日:2017年9月28日

カテゴリ:事務所ブログ

ここ1年ほど、労働事件が本当に増えたなという実感があります。

労働事件、特に残業代請求事件にはきっかけがあります。会社との人間関係、もっというと社長や上司との人間関係が崩れたときに、まるでその仕返しのように、というか、仕返しそのものとして、残業代の請求がなされることがある。

特に中小企業さんの場合、「先代の息子が社長になった。新しい社長が気に入らない」とか、「新しく取締役に昇格したあいつが気にいらない」、つまり、事業承継に伴う社内の不満がこういう形で現れて、突然、過去にさかのぼってどさっと請求が来る。

中小ですと、就業規則がないとか、タイムカードはあってもきちんと実態を反映していないとか、残業代の「つもり」で渡している手当があるなど、きちんと体制が整っていない場合が多いものです。その状態で、まっとうに残業代請求を食らうと、がつんと沈没します。いくら「タイムカードは実態とかけ離れているんです」と訴えても、その主張がとおることは極めてまれです。

こういうときに沈没せずにことを収める方法は、ま、ないわけではない。ですが何より、こういう事態が起こらないように、きちんと事前に防止策をとるのが一番です。

「社長も変わったし、これから就業規則も見直して、体制を整備して…」では、遅いのです。

事業承継で、会社を、他の会社、新しい社外の人にゆだねるときには、残業代等はクリアしなければならない問題として意識されます。しかし、息子や娘など親族に事業を承継させるときは、これが先送りにされることが多い。その結果、承継した新社長は、慣れない事業の操縦に加えて、社内問題にも悩まされることになります。

就業規則の整備、残業の把握と管理、残業代の支払いは、決して先送りにしてはいけない。今やらなければ、それはせっかく立て直した、あるいは承継した会社を一発で沈没させる爆弾になります。早急な対処を、強くお勧めします。