将来を見据えたM&Aのために その4(最終回)

投稿日:2017年1月23日

カテゴリ:事務所ブログ

最後の、そして、一番大事かもしれない点は、条件に、合意内容に、相手の人的な要素に、あるいは、第六感が、納得できない場合には撤退する勇気がいる、といことです。

M&A契約後に紛争が発覚し、お客様が当事務所にいらっしゃいます。事案をお伺いし、私たちが契約書を見て、あれ?と思い、
「どうして、こんな条項を入れたんですか?」「この条項については、協議しなかったんですか?」とお客様にお尋ねすると、「いや、交渉はしたんですが…」「こうしてくれと要請したはずなんですが、返事が来なくて…」「私たちの対案を受け入れてもらえなくて…」「ここで妥協しないと、せっかく進んできた話が壊れてしまうと思いまして…」結局、この条項が入ったまま、契約締結に至りました、という方が多いのです。
M&A交渉は、膨大な時間と体力を要します。「ここで、この条項さえ決まれば、この話はまとまるのだ」と思うと、思わず「まあ、大丈夫だろう」「まあ、いいや」と思ってしまうお気持ちはよくわかります。
しかし、もし、その条項で問題が生じたら。M&A自体が、取り返しのつかないものになってしまうのです。M&A交渉に使う労力は大きい、費用も掛かった、無駄にしたくない、その思いはわかります、しかし、成立後の惨事は、ときに、単なる時間とカネのロスにとどまらない、破壊的なものになりかねません。

そして、退く勇気を持つためにも、「このM&Aを、何のためにやるのか」「当社が譲れない一線はどこか」につき、予めぶれない軸を持っておきましょう。